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チョコレート・テイスティング

勝手に食べておいしければいいんじゃないかとも思いますが、駄菓子ならともかくも何度も試すには懐が痛いチョコレートもあります。一度食べたらその味をしっかり味わって覚えておきたいし、記録にも残しておきたい。私は、そういう思いでチョコレートのテイスティングを始めました。

近年になってビーントゥバーのチョコレートが増えてきて、様々なチョコレートが手に入るようになりました。選択肢が多くなったのは良いことですが、単に手作りをうたっているだけだったり、作り手と価値観が合わなかったりすることもあります。チョコレートのテイスティングを身につけることは、信頼できるチョコレートの作り手と出会えたり、自分の好みがどういったところにあるのかを知ることに繋がります。

私がチョコレートのテイスティングについて、最初に参考にしたのは、チョコレート鑑定家クロエ・ドゥートレ・ルーセル氏の記事”The Chocolate Connoisseur”でした。これは当時pdfの形式でウェブで観ることができましたが、その後、彼女の著書「チョコレート・バイブル」として日本語版されました。その他に、ウェブで調べて、外国の記事を多く参考にしました(文末に、今でも残っているものをいくつか示しました)。当時、日本ではまだチョコレートテイスティングについて書かれたものが少なかったからです。以降、いくつかの科学的でないものは無視しましたし、もっと合理的な選択があればそれを加え、自分なりのテイスティングを続けてきました。人に教えたり、意見を交換する中での気づきを追加して、今に至っています(2018年2月、記)。

チョコレートを長年食べ続け、ある程度の知識がついたように思うので、ここに、チョコレートのテイスティングについてまとめておきます。

目次

チョコレート・テイスティングのやり方

はじめに

まず、一回のテイスティングで試すのは4個ぐらいが適当です。最大でも7個が限界でしょう。たくさん試しても、その違いを明確に理解するために何度もそれそれを口に運ぶ羽目になり、味覚が混乱するだけです。

初めての人は、コンビニに並ぶチョコレートとプレミアム・チョコレートを食べ比べ、植物油脂が入ることによる食感の違い、カカオの風味の強さ、強く加えられた香料の味を知ることから始めるのがわかりやすいでしょう。基本の味を知ることで、次のテイスティングがもっと楽しくなるはずです。

私は大抵午前中にテイスティングをします。まだ味覚が汚れていないこと、室温が低めでチョコレートが溶けすぎないためです。明るい陽射しが部屋に入りやすく、色の観察や写真撮影に向いているのも理由になるでしょう。

さらに、静かな環境が必要です。音楽、テレビ、道路の騒音、話好きな友達のようなBGMは、味覚を鈍らせます。Eメールのチェックも止めましょう。椅子に座り、眩しくない部屋で静かに味わいましょう。テイスティング中に会話はいりません。テイスティングが終わるまで、心に残ることは全てメモに残し、口の機能は全てチョコレートを味わうために使うべきです。

私は、サロン・デュ・ショコラ東京などで開催されるチョコレートのセミナーにもよく参加します。しかし、一人部屋でテイスティングをする時ほどには、セミナー会場でチョコレートを味わうことができません。集中力がないし、部屋の温度が暖かすぎたりするからです。テイスティング会を行うこともありますが、それは味と向き合うよりも、他の人の感じ取り方や好みの違いを楽しむことが、私にとっての一番の目的になっています。

テイスティングの準備

テイスティングの合間に味覚をリセットするためのものが必要です。常温の水や、食パンが適しています。瓶に常温の水を準備するのがいいでしょう。個人的には、楽に飲める(体温に程近い)ぬるま湯がお勧めです。そうすれば口の中が冷えず、次のチョコレートを含んだ時の溶け方に影響しません。水だけでは油が喉に残ることもあるので、舌や喉をぬぐうために時々パンを口にします。通常、テイスティングの順番は、甘味や酸味が穏やかなものからテイスティングしますが、順番を誤って味覚が狂ってしまった場合は、酸味のない高カカオのチョコレートを食べると舌をリセットできます。

テイスティングするチョコレートをできるだけ同じ外見に整えます。食べやすさを考えると板チョコレートを数センチ角に割ったものが適当です。
chocolate tasting sheet
テイスティング用シートがあると便利です。メモする項目を忘れすにすむし、個々のチョコレートの違いも明確になります。チョコレート用テイスティングホイール(評価用語一覧)を使うのも便利です。写真は、実際に教材として使っているものです。

テイスティングの実践

全ての感覚を使ってチョコレートを感じてください。

①目で観察

外観を観察します。管理が悪くてブルーミングしていたりしませんか?エッジはしっかりしていますか(部屋の温度が高すぎると質感が変化します)?滑らかで光沢がありますか?厚みはどれほどですか?色は赤味がかっていますか?深い茶色ですか?

②手で観察

触れてください。柔らかいですか?固いですか?粘りますか?滑らかですか?ザラザラしていますか?表面の質感が滑らかなほど口の中での舌触りがよくなります。

③耳で観察

チョコレートを真ん中で割って、その音を聞いてみましょう。乾いた音で割れましたか?鈍い音でしたか?高カカオの均質な板チョコレートは乾いた音を立てますし、ホワイトチョコレートはそれほど音を立てません。

④鼻で観察

テイスティングの半分は嗅覚によるものです。
嗅覚の使い方は二つあります。一つは外気を通じて感じる香り、もう一つは口に通じる鼻菅からの香りです。前者を使うには、まずチョコレートを指でこすります。芳香を捕らえるために両手のひらでカップを作り、その間にチョコレートを入れて握ってください。ゆっくり息を吸って嗅ぎます。強度、甘味、俗味を感じてください。これによってパッケージを開けた時の香りを再現できます。香りを記述するのは慣れるまでは難しいかもしれません。

後者を試すには、チョコレートを口に入れなくてはいけません。⑤に続きます。

⑤口で観察

まず食感をみます。チョコレートが舌の上で体温と同じになるのを少し待ち、歯で砕いて口の中にチョコレートを広げます。チョコレートが舌の上を流れ喉に届くまでの食感を観察します。口溶けは早かったでしょうか?舌触りは滑らかでクリーム状でしたか?脂濃くて粘りますか?それとも、ザラザラと粒子を感じましたか?

いよいよ、味わいます。
口の中から鼻に立上る香りを感じます。苦味、酸味、甘味はどうでしょう。フルーツのようですか?それとも、ナッツに似ていますか。香りは、食べ始めから次々と変化します。食べ初めのファーストノートは揮発性の高い香りです。フローラルな香りが感じ取れやすいでしょう。ミドルノートは砂糖の甘味と混ざって香りが一番強くなります。ラストノートは、いわゆる余韻です。全てが喉の奥に流れ去った後も、口の中に香りが続きます。お酒の入ったチョコレートなどは、他に何も口にしなければ、30分後でも味が残っているものです。

評価

味を言葉に置き換えるのは、誰しもが最初から簡単にできるものではありません。味の記憶力は人それぞれですし、言葉による表現が苦手な場合もあります。最初は、何に似ているかに気づくところから始めてください。ナッツみたい、ベリーに似ているといった具合に。ヘーゼルナッツかアーモンドかと、さらに細かい区別がつくようになるには、実際のナッツと食べ比べる必要があるかもしれません。

同じ品種のカカオ豆を使っていても、ブランドによって驚くほど味が異なるものです。味の傾向がわかるようになると、そのうちご贔屓のブランドが見つかることでしょう。

万人に共通する絶対的な価値はありません。評価は、自分の好みについて行うものです。自信が持てなくて、誰かの評価を参考にしたくなるかもしれませんが、そういう場合は、星の数だけではなく、その高評価の理由を聞くべきです。単にシェフの顔に好感を抱いてつけた評価かもしれませんし、その方のポリシー(ヴィーガンであったり、オーガニックであったり、ミニマリストであったり)が加味されているかもしれませんから。この日、私はこのチョコレートをおいしいと感じたという事実、それが、最も大切な評価です。体調、気温、時間帯で、味の捉え方は変わるもの。経験の有無があれば、なおさらです。

さいごに

テイスティングが楽しいと思えたなら、カカオやチョコレートについても学ぶことをお勧めします。都内には、ビーントゥバー工房の見学会を実施しているところもあります。カカオの産地の特徴、製造方法、チョコレートに関する専門用語を学ぶことで、味わい方もより細やかになって、メモもより詳しくなるでしょう。ますますチョコレートがおいしくなることは請け合いです。

(参考)
david Lebovitz:Chocolate Tasting
THE NIBBLE:Tasting 101-Part 1: Bar None, Tasting 101-Part 2: How to Taste Chocolate
About.com:How To Taste Chocolate

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用語・雑学
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コメント

  1. 飯田千恵 より:

    本当に素晴らしい記事をありがとうございます。
    私はクロエ ドゥートレ ルーセルさんの著書、チョコレートバイブルに感銘を受け、チョコレートテイスティングをはじめました。しかし、最近、よりよく味わうためにはどうしたらいいのか、そもそもこのやり方はどこまであっているのか、と混乱してしまっていました。
    私は、将来チョコレートテイスティングの教室を開きたいと思っています。
    そのためにFaceBookにファンページを作りました。ぜひこの記事をリンクさせてください。
    これからも応援しています!

  2. lovechoco より:

    リンクのご申し出をどうもありがとうございます。

    いろいろなチョコレートを食べ比べるのは楽しいですよね。
    テイスティングをやればやる程にチョコレートの世界の奥深さを知ることができ、その製品がどれほどまでに高度な技術を要して届けられているのかがわかると、その一口が貴重に思えます。

    いろいろやり方はあるかと思いますが、たぶん基本は同じだと思います。チョコレートでもワインでもチーズでも。
    静かな環境で、その人が持つ味の経験を使って、出来る限り詳細に味の特徴(香りの推移があれば、それも含めて)を記述すること。

    チョコレートのテイスティングの教室って面白そうですね。私もチョコレートの楽しみ方をより多くの方に知ってもらいたいという気持ちは一緒です。がんばってください。

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