ヒキタクニオ;原宿団地物語

青山キラー通り沿いにある原宿団地を舞台に、ちょっと変わった住民達の面白くてほのぼのとした生活を描いた短編集。マルチメディアクリエイターでもあるヒキタクニオ氏がスピード感のある飽きのこない展開で楽しませてくれます。

どの話も団地の住人が巻き込まれた少し風変わりな体験を綴ったものですが、唯一通して登場するのが、誰に頼まれたわけでもなく団地内を掃除している小曽根さんである。浴衣を着たレレレのオジサンとはちょっと違う。下町で生まれ、青年期をアメリカで過ごし、四十半ばで日本に戻ってきたせいで、下町生まれの巻き舌と米国風な英語の発音とで、どこか日系人のような話し方をする、ちょっとイカしたオジサンって設定。

時には自警団の団長として、時には高級ヒーリングマッサージ屋の客として、時にはお悩み相談の相手として、様々な事件の局面で小曽根さんはひっそりと活躍している。

最終話の「チョコレート・ペーストの日々」は、小曾根さんの妻が初めて登場する。大柄な体で気が小さいクリスティナはベルギー出身のフランス人。結婚して四五年欠かさずに朝食に食べ続けたのは、2種類のサンドウィッチ。一つはロースハムとチーズ、もう一つはKWATTAのチョコレート・ペースト。そして、ブラックのコーヒー。
クリスティナの作るフランドル地方の料理は小曽根さんでなくても美味しそう。

ある日、クリスティナが団地の裏で隠れるように泣いていた男の子を見つける。どうやらガキ大将だった子が、転校を機にいじめられっ子に転落したらしい。困った人がいるとどんな小さなことでも放って置けない小曽根さんは、ここでも男の子の抱える問題の解決に乗り出すのでした。

軽快な文章と色彩豊かな状景、そして魅力的なキャラクターが生き生きと描かれて、まるでアニメを見ているかのようなポップな楽しさを味わえます。

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